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 こうしているあいだにもわたしは落下しつづける。
 いましも大気圏に突入するところであるか、氷点下数十度の大気の中であるか、飛ぶものたちとあやうくすれ違うのか、山肌を転がるものか、わたしの知ったことではない。空気抵抗をうけとめるのは背中であるのか、弾丸のごとく地を目指すものであるか、わたしの知ったことではない。
 そろそろいいわ、と、告げる声のするまで、暗がりですらないものに全感覚を顰め、すべからくを瞑ってわたしは落下しつづける。怖れないでそこにいて、わたしの速度はさしのべられた腕を砕きはしない。怖れないでそこにいて、わたしの物語はあなたの世界を砕きはしない。ほんのすこしのあいだ、おなじ速さで星に落ちる。おはなしの綴じるまで。
 吐息のような呼び声とともに瞼が生じ、ひらく。あなたがみえる。